2016年2月4日木曜日

大村 智博士の実学と美学・ラジオ深夜便から

 いつの間にかTVのない生活になって久しい。その代わりラジオを聞くことが多い。ラジオ深夜便を聞く事があるが、早く眠らなくては翌日に差し支えると思いつつ、話し手がノーベル賞を受賞された大村博士だったのでつい最後まで聞いてしまった。

 大村博士は絵画の収集家としても知られ、女子美大の理事長もされていた時期がおありで、5年ほど前、秘書を通じてお会いする機会があった。私はお会いしたいと思った方には、紹介者なしで、不躾と思いながらも手紙を差し上げて面会を求めることが多い。ほとんどの場合手紙は無視されお返事をいただくことは稀だが、大村博士からは秘書を通じて日時の指定があり、お目にかかることができた。

 「芥川紗織の遺族から遺作をすべてお預かりするようになって20数年が経過したろうか。紗織さんは1966年に42歳の若さで没しているから活躍期間は短い。彼女の作品を大村博士の美術館にぜひ所蔵していただきたい」と言うのが、そのときのお願いであった。その後、資料もお送りしたが・・・・
  ご多忙を極め、それどころではないということか、誰の紹介もなしに来た私をどう思われたのか、いまだに私の中ではお返事を待ち望んでいる。

 深夜便のお話は、お会いした方が生の声で話されていたので、リアリティがあって記憶に新たである。博士は年間数十億という多額のロイヤリティをご自身の発明から得ておられることを話され、それらを①研究費として、②北里研究所、③人材育成のため~大きく分けてこの分野に使い社会に還元するということ。人材育成については、若いとき~小学・中学が大事で、大学では遅すぎること、また東京一極集中ではなく地方に多彩な才能が育つことが望ましいと話されていたのが印象に残った。
 大村博士の偉大なことは、素晴らしい学問上の業績だけではなく実学を重んじておられること。学者でありながら経営感覚を備えておられると見た。

 大村博士のお話を聞いて、久保貞二郎先生のことが頭をよぎった。久保先生は東大を出られたあと、1933年地主の久保家に婿養子に入られてから美術に目覚め瑛九、池田満寿夫、AY-O、北川民治、泉茂など多くの作家を援助し、ご自身もコレクターとなられた。美術評論家として有名だが、自ら作品を買うばかりでなく人にも買うことを勧め、絵を所蔵して楽しむことを教えた、正に実学の人であった。実学の人はお金のことをしっかり考えるがそれは私利私欲のためではなくお金が有効に使われて広く世の中を巡り、多くの人を豊かに潤すことを目指すことだと、私は思っている。正しい実学の人がもっと増えるともう少し世の中が良くなるのではないでしょうか。

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